1,5話「優柔不断者は2度死ぬ」

今日も探索を終えたヒーガンたちは、酒場で夕食をとっている。
「迷宮解禁」の御触れでも出たかのように酒場はごった返している。


「うーん……」
「何よヒーガン、吐くならトイレで吐きなさいよ」
「ちげーよ、ジニー。
あれさ、スキルってさ、カスタムのとき
習得条件満たしてないスキルを選択すると、習得条件が出るだろ?
俺さ、それ知らなくてさ、みんなのスキル適当に振っちゃったんだ……」


ヒーガンにはメンバーから漏れなく溜息と軽蔑の視線が向けられた。
「や、や、でもさっ、Lv11になれば休息して、スキル振りなおせるかもよ!?
あたしはあんまり探索に参加してないから、先の話だけど……」
「さすがジニー、いいこと言うな! まいすぃーと……」
「キモッ! てか酒くさっ!
明日には2Fのマップ全部埋めてやる、って息巻いてた癖に、
これじゃあ完全に二日酔いね」
「まぁスキルに関しては、今の段階では手探りで覚えていくしかないでしょう。
でもね……一つだけ納得できないことが……」
普段は自分から口を開くことの少ないカオルが、
立ち上がり身を乗り出してヒーガンに詰問した。
「なんで俺が男性グラフィックなんだよっ!」
「い……いや、他意はないよ。
DSの小画面で見た男性アルケミストがすごいかっこよかったのと……
女性アルケミストはあんまり小画面では映えな……っと、これは個人的な趣味の話だが。
まぁいいじゃん、キャラデザさんも男性アルケミストが主人公です、って言ってるし」


「しかしお前ら、ゲームの世界観を無視したような話ばかりしているな」
とコロン。
「まー、一回スキルが気に入らなくてリセットしたりしてるしな……今更もういいやってことだな!
しかし酒の勢いでぶっちゃけちゃうと、
あんまり思い入れがないフェンダル兄弟が意外にも大活躍なのが悔しいな」
「意外……ってあんたねぇ」
「そんなぶっちゃけトーク聞きたくないですよ、リーダー……」
「気にするな、頑張ってレギュラーに居続ければ、
今みたいに発言が増えて、この文章書いてる人の脳内に
お前らの人格がちゃんと作られるからさ。多分。
それより明日は3Fまで潜る予定だ、そろそろ宿に戻ろうか。
あそこは何時に帰ってきても5時には追い出しやがる。
まったく、客をなんだと……」


そんなことを言っていたヒーガンだが、
結局夜更けまで酒を呷り、
二日酔いでガンガンする頭のまま次の日の冒険に出ることとなったという。