第0話「旅立ちの時!」

ここはエトリアの外れにある酒場。
世界樹の迷宮が発見されてから、冒険から帰還した猛者達が
食事や休養、情報交換のために集まり、以前には考えられないような盛況ぶりだ。
しかし夕刻の今どきでは客も比較的少ない。
奥まった席ではレンジャーが戦弓の弦を弾いて単調な旋律を奏で、
即興詩を低い声で詠っていた。
テーブルの上には空の酒瓶がいくつも散乱していた。


「ヒーガン、また詩人の真似ごと?
『腐れ弓』だなんて言われるくらいなら、転職した方がいいんじゃないの?」
いかつい冒険者ばかりの酒場の中では、
不釣合いな華やかな少女が声をかけた。


「ジニーか…詩人や哲学者じゃあメシが食えんのでな」
「今だってごはん食べられてないじゃない!
それにその酒瓶!また店主さんに無茶言ってツケてもらったの!?」
「これは羽振りのよさそうな冒険者がおごってくれたんだ。
迷宮が発見されてから景気がよくなってな、酒には事欠かん。
世界樹さまさまだな」
「あんた、それじゃ物乞いだよ…」
「また今日は一段と突っかかってくるな。何かあったのか?」
「えへへー、あのね、あたしも世界樹の探索に行くことにしたの!
あたしも結構ツケ溜めちゃってるしね…」
「へえ、それはよかった。儲かったら少しはおごってくれよ…」
「だぁーかーら! これからが本題なの!
一緒にPT組むことになった人が、レンジャーがいた方が心強い、っていうから…」
「俺はもう弓は捨てた」
「捨てたならその格好して弓を持つの、止めなさいよ…
まだ未練があるんでしょ?」
「未練はあるさ。
だが俺には伝説の勇者の血も流れて泣ければ、
迷宮の深層の謎を解き明かすような能力もない…」
「もー!! この悲観論者! ニヒリスト! アニメおたく!」
「いきなり世界観をぶち壊すようなこと言うな」
「だからパーティを組んで、力を合わせれば、
迷宮の財宝もゲットし放題よ!
それでね、あたしと一緒にパーティ組んでくれる人が…」


ボックス席のジニーの隣に、スラリとした女性が座り込んだ。
「ほう、こいつは『腐れ弓』のヒーガンじゃないか。
腐れ縁のジニーが紹介してくれるのが『腐れ弓』とは、つまらん洒落だな」
「この人がアルケミストのシキさん。シキ・カオルね」
「聞いているぞ、ヒーガン。
以前はジニーとコンビを組んで旅をしていたと。
理由は知らんが…今は不名誉なあだ名をつけられているが、
実力はそこそこあったんだろう?」
「買いかぶるな、自分の実力に絶望して、今ではただの飲んだくれさ」
「ジニーから聞いていた以上の偏屈者だな…
だからな、お前一人では無理でも、力を合わせればだな…」


人の少ない酒場に胴間声が響く。
「ふう! やっと休むことが出来そうじゃわい!
マスター、茶を頼む。とびきり熱いのをな!」


「あ、あれコロンさんじゃない?」
「まったく、今日は厄日か? 面倒なのが次々と…」
「おう、そこにおられるはヒーガン殿にジニー殿!
そなたらも迷宮に挑むつもりでこの街にいらしたか!
なんたる偶然! ワシも迷宮目指してこの街に今さっきついたところでな。
この亡霊騎士ことコロンも、ご同行しますぞ!」
「し、ししょー! 待ってくださーい!」
「おう、ストラ、すまんすまん、
しかし大収穫だぞ! ワシの以前の命を預けた仲間が二人ともおってな、
これで迷宮なんぞ一ひねりじゃわい!」
「俺は迷宮に行くとは一言も」
「ヒーガン、カオル! すっごい偶然!
仲間探し続けて、半日で5人も揃うなんて!
早速ギルド登録に行きましょ!」
「うむ、そうだな、パラディンのコロンにソードマンのストラか。
宜しく頼むぞ」
「おう、こちらこそな、べっぴんさん!」
「足手まといにならないよう、がんばりマスッ!」
「だから俺はいかな…」
「じゃ、リーダー、登録頼んだね!」
「なんかいつの間にかリーダーだし…!」


半ば強引に「世界樹の迷宮」に潜ることになった俺ことヒーガン。
はた迷惑に思いながらも…俺の胸は新たなる冒険に鼓動を早めていた。


キャラの性格が初期設定と大分違うのは気にするな!
画面写真とかのっけちゃっていいのかなぁ?ともかく発売まで三日!
楽しみで仕方がないぜぇぇ!